LOADING...

CLOSE

INTERVIEW

株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン
代表取締役社長

石坂 信也

インタビュー

2000年に代表の石坂がたった一人で創業したGDOは、今や社員538名を抱える(2018年2月末時点)東証1部上場企業となった。ピーク時1200万人だったゴルフ人口は2017年に550万人まで減少した(出典:レジャー白書2017)と言われるが、GDOの売上高は6年連続で右肩上がりに成長している。創業から17年。これまでの軌跡と石坂の想い、これからのGDOについて、余すところなく話を聞いた。

石坂 信也(いしざか のぶや)

三菱商事に10年間在職した後に独立し、2000年5月 (株)ゴルフダイジェスト・オンラインを設立。代表取締役社長就任。ゴルフ総合サービス企業として、ゴルフビジネスとITを組み合わせた事業モデルを積極的に推進。2004年東証マザーズを経て、2015年9月東証1部上場。月間総ビジター数1900万人超、現会員数は300万人を突破。 1966年12月10日生まれ。成蹊大学卒。ハーバード大学MBA取得。

――企業ミッション“ゴルフで世界をつなぐ”とは?

2016年開催のリオデジャネイロオリンピックでは、116年ぶりにゴルフが正式種目として採用されました。日本でも、2020年の東京オリンピックに向け、すでに世界を舞台に活躍するトップ選手を始め、メダルを狙える若手選手も多く台頭してきています。

ゴルフには、そういった世界の舞台で多くの感動を生み出す選手が活躍する「プロフェッショナルスポーツ」としての側面と、友人や親子など世代を超えて楽しめる「レジャースポーツ」としての側面があります。「レジャースポーツ」という観点では、子供からシニア層まで幅広い年齢層がともにプレーでき、国籍や言語が異なる相手ともコミュニケーションが取りやすいなど、多くの魅力にあふれるスポーツです。

GDOは「ゴルフで世界をつなぐ」という言葉を、2010年から企業ミッションに掲げています。「世界をつなぐ」という言葉には、単に日本と海外という意味合いではなく、「人と人をつなぐ」「人とコトをつなぐ」というような、ゴルフを“媒介”として何かと何かがつながる、コネクトしていくという意味を込めています。

こんなエピソードがありました。弊社が主催した会員様向けのゴルフコンペでのこと。一人の男性から「ラウンドする組を変えてほしい」という申し出があり、なにか事情があるのかと話を聞くと「兄弟が参加しているから、同じ組でラウンドしたい」ということでした。なんと、そのご兄弟はそれぞれが参加していることを知らずにコンペにエントリーし、ゴルフ場で5年ぶりの再会を果たしたのです。これには我々も驚きました。偶然にも、兄弟の再会のお手伝いをできたのですから。

これは一つのエピソードでしかありませんが、こうした「ゴルフで世界がつながる」瞬間をもっともっと提供していきたい。「ゴルフで世界をつなぐ」に込めた想いを多くの社員にもより深く理解してもらい、仕事を通じてそれを体現してもらいたいと思っています。

――ゴルフは、人々の生活に何をもたらすのか?

2011年に東日本大震災という未曾有の大災害が起こりました。当時、経営の危機に瀕した企業も多かったかと思いますが、GDOも例外ではありませんでした。 多くのゴルフ場が被害にあったことや日本中に広がった自粛ムードが影響して、経営に大きな打撃を受けました。自分自身の中でも「日本がこんな危機的状況下にある中で、 レジャー産業であるゴルフで何ができるのだろうか」という葛藤もありました。 ですが、ある程度復興が進んだ東北地方のゴルフ場には、週末になるとひとときの休息を求め、多くの人が足を運んでいたと聞きました。

もちろん、震災直後はそんな状況ではなかったと思いますが、毎日毎日“復興”だけでは人は息が詰まり、疲れ果ててしまいます。ほんのひとときでもゴルフをプレーして仲間とともにリフレッシュして、風呂に入って家へ帰れば、また明日から元気になって復興に取り組むことができる。ゴルフという“遊び”は決して無駄なものではないと思わせてくれた出来事として、私の心に深く残っています。

ゴルフは、衣食住のような生活必需品ではありません。
ですが、友達や家族と交流すること、自分自身が心から夢中になったり、達成感を得たりできること。これは人間が人間らしくいるためにとても大切なことだと思いました。

ゴルフを通じてこうした気持ちを多くの人が持ち続ける――そのためにGDOが貢献できるのであれば、それこそが我々の存在意義なのではないか、とその時思い至ったのです。

――創業の原点になるようなゴルフへの想いはありますか?

私が社会人になった1990年は、いわゆる「接待ゴルフ」のようなビジネスゴルフが盛んな時期でした。入社して最初に与えられた仕事は、ゴルフ場の予約開始日に電話をかけ、3ヶ月先の予約を取ること。今でいう人気ライブのチケット争奪戦みたいなものです。当時すでに2,000以上のゴルフ場があったのにもかかわらず、人気のゴルフ場はなかなか予約が取れないというのが当たり前の時代でした。

昔から日本のゴルフは、「敷居が高い」「オジサンのスポーツ」「お金がかかる」「仕事の一環」などというネガティブなイメージを持たれてきました。しかし、私は幼少時代を含め海外での生活も長かったため、Tシャツに短パンで楽しむ気軽なゴルフスタイルも知っていました。

「やりたいからやる」「楽しむためにやる」。当時の日本では、決して簡単なことではありませんでしたが、だからこそ、それを実現したいと思う気持ちがありました。

――起業のきっかけはどのような経緯ですか?

社会人6年目の年、勤務する会社の社費留学制度を利用してMBA取得のため留学準備を進めていました。その時期に、父のがんが発覚。それからたった3ヶ月で亡くなりました。

私は上に3人の姉がおり、きょうだいの中では唯一の男で末っ子長男です。そのため葬儀にも深くかかわることになるのですが、喪主である母の想いを叶えるため、少々“型破り”な段取りに奔走しました。

親族に渋い顔をされることもありましたが、結果的には父らしさを感じられるような葬儀を実現することができました。想いを実現するためには常識にとらわれてばかりではだめなのだ、と父の死が教えてくれたような気がしました。その後、父の遺志でもあった米国ハーバードビジネススクールへの留学に行きました。今までとは違う生活環境の中で多くの刺激を受け、自分自身で物事の本質を捉え、「こうしたほうがいい」「これは間違っているのではないか」、そう思った事柄から目を背けずに向き合い、必要ならば変革していく姿勢を身につけていきました。そして、 留学時代に書いたビジネスプランが、GDO起業の種となりました。思い返せば、父の死から米国留学までの一連の出来事がGDO創業に至る、大きな転換点だったのだと考えています。

ハーバードビジネススクールで書いたGDO起業のもととなったプラン
GDO立ち上げ時の愛宕オフィスにて

――低迷するゴルフ業界で専業を貫いている理由は?

ゴルフ業界は、現在も国内外問わず厳しい状況が続いています。私がゴルフビジネスに携わってきた17年間で、だいぶ変化は見られるものの、私が創業時に作った「もっと気軽にゴルフが楽しめる環境を作りたい」という理想は、まだ半分も達成できていません。その実現を目指し続けるのも勿論のこと、この業界での新たなビジネスチャンスというものも、まだまだ存在すると思っており、それを発掘するのも我々の役割だと思っています。

例えば、働き方改革。会社に縛られ、仕事にばかり時間を取られていたような暮らし方から、より豊かで人間的な生活を望む人が増えてくるでしょう。そこで趣味としてゴルフを、と考える人がいるかもしれません。そういった意味でも、ゴルフというレジャーに秘められたポテンシャルはまだまだ高いと考えています。

また、ゴルフをもっと気軽に、という意味では「ここも足りない」「あそこはもっと強化したほうがいい」という分野もたくさんあります。

ゴルフ場予約事業を例にとって言えば、弊社と提携しているゴルフ場は2,000を超えており、提携数そのものは日本中のゴルフ場を網羅しているように見えていますが、まだ「取りたいときに必ず取れる」状態にはなっていません。今や、ホテルや飛行機、レストランもすべてネットで予約が取れるようになっていますよね。レストランに関していえば、10年前までは電話予約が当たり前のような業界でした。

それがどんどんと解放され、ユーザーの満足度が飛躍的に上がってきています。ところがゴルフは、インターネット予約サービスが開始されたのは早かったものの、普及という意味ではゆるやかです。より多くの人がストレスなくプレーでき、思い切り楽しめるような仕組みが完成していないし、我々にはやるべきことがまだまだあると思います。

――創業20周年、さらにその先へと向かう展望を聞かせてください。

今も未来もキーワードは「我々の提供する価値を最大化させて、さらにお客様の満足度を上げる」こと。新たな事業の創出も大切ですが、既存事業を愚直に磨き上げていくことが最も重要です。

ゴルフ場予約事業、ゴルフ用品販売、メディア、レッスン。17年間、それぞれの事業で一定の成果は出ていますが、GDOのサービスを利用してもらって「よかった」「このサービスが必要だ」と思ってもらえている状態をもっと徹底的に追求したいと思っています。

華やかでも派手でもないコツコツとした地道なやり方かもしれませんが、価値を高めて満足度を上げることをとことん掘り下げていきたいのです。ですから、それに関わることにはどんどん投資していくつもりです。最終的な理想は、GDOを使っていることが「カッコイイ」、GDOが「便利で、かつ有益な情報を与えてくれる」と思ってもらえる存在になること。

「GDOがあってよかった」とより多くの人に言ってもらえることが永遠のテーマでもありますし、ずっと追い続けたいことです。社員たちには、ゴルフが好きではなくてもいいから、ゴルフビジネスのプロになってほしいと伝えています。ゴルフを身近に感じながら、ホスピタリティの精神をもって仕事をしてほしい。その姿勢を徹底的に追求する社員がひとりでも多くいれば、もっと面白い会社になるし、私自身もそうならなきゃいけないなと日々あがいていますよ。

これからもGDOは、伝統ある格式高いゴルフ場でのプレースタイルも、Tシャツ短パンでのカジュアルなプレースタイルも存在する、そんな日本のゴルフの多様化を後押ししていくつもりです。振れ幅の大きさを持ち、自由なスタイルを実現できることがゴルフ業界の明るい未来につながってくると私は信じています。