LOADING...

CLOSE

古きと新しきが共存し進化する――“海の見える街”でチャレンジした「ナイトゴルフ体験」レポート

“海の見える街”に憧れたことがある人は多いのではないだろうか。海洋に囲まれる日本において、条件を満たす街はさまざまな場所に存在するが、その中でも「湘南」という響きは特別だ。その地域ブランドや生活スタイルに惹かれ、都心を離れて移住する人も少なくない。そんな湘南のビーチに「ゴルフ」を持ち込んだらどんなことになるだろう――。着想から1年あまり、「湘南ビーチ」×「ゴルフ」は、“ナイトゴルフ体験”として2018年夏の夜に実現した。



“湘南”の定義には諸説があるらしい。辞書を引くと「神奈川県相模湾沿岸一帯の地域の称。鎌倉・逗子・葉山・大磯などを含む。温暖な気候と長い海岸線に恵まれる京浜地区の住宅地・行楽地」とある(出典:三省堂 大辞林)。そんな相模湾沿岸を指す湘南エリアだが、その中でも最も歴史の古いと言われる海水浴場が「由比ヶ浜海岸」である。一年を通じて多くの行楽客が訪れるが、とくに夏の日中には関東近県から訪れる水着姿の男女でビーチが埋めつくされ、季節を象徴するニュースとなる。

「いつも新しいものがあって、新しい人たちが来て、新しい風が吹いているのが由比ガ浜海岸」と話すのは、由比ガ浜茶亭組合長の増田元秀氏だ。この土地を隅から隅まで知り尽くす“由比ガ浜のドン”と言ってもいい、海の家一帯を運営する茶亭組合のトップだ。今回、GDOが夜の浜辺での「ナイトゴルフ体験」イベントを実現するために多くの協力を仰いだ重要なパートナーである。


由比ガ浜の魅力を知り尽くす増田氏。歴史を受け継ぎ、新しさを生み出し続けている


由比ガ浜の魅力を聞くと、「新しいものを受け入れて共存するけれども、バックグラウンドには長い歴史がある。それがうち(由比ガ浜海岸)の強み。そして歴史もあるけれど、最先端の文化・ファッション・人が集まる場所でもある。古きと新しきが共存し進化しながらも、そこには由緒がある。それがこの土地の一番の魅力かな」と語った。ゴルフにも、古くからの伝統と今の時代に沿った変化がある。「古きと新しきが共存し進化する」ことを常に意識する同氏の理念とGDOの目指す方向は、非常に共通項が多い。


夜の海辺に設置したLEDの的やテントが幻想的に光り輝く


そんな共通点を見出したこともあって、“ナイトゴルフ体験”イベントはこの由比ガ浜で開催された。夏の行楽シーズンのど真ん中といえる8月中旬の週末2日間。遊泳時間が終了となる17時から設営をはじめ、日没後の19時よりスタート。LEDで光る的に向かってボールを打つという、“射的”のような要素を入れた夜の浜辺のアプローチゲームだ。その光は海水浴を終えて帰路に向かう人びとの目線をさらい、あっという間に行列となる状況となった。普段ゴルフ場では見かけないような若者グループや子供を連れたママたちなど、多くのゴルフ未経験者も参加した。

昨年の由比ガ浜海岸海水浴客数は、約52万人(2017年9月/鎌倉市観光商工課発表)。知名度だけではなく、安全や美観などの基準を満たし持続可能な海水浴場運営をしているビーチやマリーナに与えられる国際環境認証「ブルーフラッグ」をアジアで初取得するなど、観光への取り組みも積極的だ。その取得に尽力をした人物が、本イベント実現のもう1人の立役者でもあるNPO法人湘南ビジョン研究所の理事長、片山清宏氏だ。

片山氏はこう話す。「湘南ビジョン研究所は、2011年に地元の仲間たち10人ほどでビーチクリーン活動から始まった団体です。2013年にはNPO法人格を取得し湘南地域の持続可能な発展を目指し、さまざまなまちづくり活動に範囲を広げています。ビーチクリーンは意義あるものではありましたが、非常に地道な活動です。これだけではまちづくりへの貢献やインパクトは少ないという想いもあって、まちぐるみで企業や環境団体も巻き込み、“ブルーフラッグ”の認証に取り組みはじめました。その結果、2016年に取得が実現し、これを足掛かりに今は東京五輪に向けて江の島での取得も目指しています」


湘南地域の発展とまちづくりに熱く邁進する片山氏。鵠沼出身の「地の人」でもある


この土地で生まれ育った「地の人」でもある同氏は、湘南ブランドを世界的なものにしたい、湘南地域全体としての「まちづくりプラットフォーム」の形成を目指したいと活動を続けている。今回のイベントでは、湘南ビジョン研究所とGDOの共催として企画を進め、ナイトゴルフを楽しんだ後には参加者も一緒にビーチクリーンをしてイベントを終えるという形をとった。

参加者のなかには、このあたり一帯の住民の方々も多かった。「これ、何やっているんですか?」と興味津々にスタッフに声をかけ、「へえ、ここでゴルフ!? ちょっと夕飯食べてから、子供連れてまた来ます」とまさに夜の縁日に出かけるような気軽さで多くの人が参加してくれた。そして、この日のために用意したLEDボールは、夜のビーチで多くの歓喜を照らし出した。

いつもは「またゴルフ?」と冷ややかな目線で見送られているパパさんが、妻や子供たちの見守る前でナイスショットをして称賛を浴びる姿。海水浴が終わってもまだ遊び足りない子供たちのパワーの発散場所が見つかったと喜ぶ母親の姿。「クラブってどうやって握るの?わかんねー!」と、はじめてのスイングに仲間と騒ぐ若者たちの姿。鮮やかに発光するボールが的へ向けて夜の空を舞うたび、人びとの笑顔の輪が広がっていた。ゴルフ場へ行かずとも、こんなに楽しめるのだから、まだまだゴルフの「遊び」としてのパワーを感じざるを得ない。


親戚、親子、ご家族総出で参加!大人も子供も夢中で打った


“海の見える街”で、歴史あるこの土地を愛する地元の人、ここを発信基地に新たな価値観を広めようと活動する人たちと数多く出会った。その人たちとほんの2日間でも縁ができ、交流が生まれたのはゴルフというスポーツの底力であり、遊びや余暇のなせる業なのだと思う。夏の夜の浜辺では「ナイトゴルフ」を、冬の一面の雪の上では「スノーゴルフ」を、走りながらやりたいなら「スピードゴルフ」を。ゴルフの多様性を追い求めて、さまざまなゴルフスタイルを開発し続けていく。まだまだ、私たちの“あたらしいゴルフ”の研究活動は終わらない。

(文・Golf Links the World編集部/星 写真・角田慎太郎)

 

■イベント開催協力:

特定非営利活動法人湘南ビジョン研究所

由比ガ浜茶亭組合