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激化する新卒採用市場でゴルフビジネスの魅力を伝える業界3社――採用担当者たちの悪戦苦闘

「就職氷河期」と呼ばれたバブル経済崩壊後の1993年から2005年。「氷河期の再来」と言われたリーマンショック後の2010年から2013年。その時期に就職活動をした世代から見れば、「売り手市場」の現状はうらやましい限りに違いない。リクルートワークス研究所によると、19年3月に卒業する大学生や大学院生の求人倍率は1.88倍と7年連続で上昇した。

だが、新卒を採用する人事担当者に視点を移せば頭が痛い状況だ。ゴルフ業界の各社も厳しい戦いを強いられている。「人材を取り合っていては、もうダメだ」。同じ苦しみを味わう競合3社はこのたび、新たな施策を開始した。就職戦線ならぬ“採用共同戦線”。初めて取り組んだ新卒採用イベントの一日を追いかけた。



「平成が終わる」という言葉に早くも食傷気味の2019年初頭だが、人事担当者や来年卒業予定の就職活動生たちの頭の中は、それどころではない。企業は新元号第1期となる2020年4月入社の新卒人材を確保すること、学生は望む就職先を探すことに必死だ。毎年10~20名の新卒社員を迎えている、GDO(ゴルフダイジェスト・オンライン)にとっても他人ごとではない。

そもそもゴルフとの接点が少なく、関心だって当然薄い学生たちに対して、ゴルフのビジネスとしての魅力をどのように伝えていくか? これはGDOだけでなく、ゴルフ業界にいる採用担当者が毎度頭を悩ませている課題だ。このままではいけない、と立ち上がったのが、小売ブランド「ゴルフ5」を擁する株式会社アルペンと、ゼビオグループに属する株式会社ゴルフパートナー、そしてGDO。業界では競合する部分もある3社が、初めて合同で新卒向け採用イベントを行った。


選考ではなく、人事担当者と少人数でカジュアルに話ができるトークイベント形式で


場所は品川区東五反田のGDO本社オフィス。スポーツ業界を志す学生に呼びかけたイベントは、ゴルフビジネスを知ってもらうためのプレゼンテーションと、3社の人事担当とカジュアルに話ができるテーブルディスカッションの2部構成とした。ゴルフはバブル期から比べると競技人口は減ったと言われているが、まだまだスポーツカテゴリの中では市場規模が大きく、ビジネスチャンスがある商材だ。

GDOの過去の採用実績からいっても、ふだん関わりが薄い学生であっても数字などを用いて説明をする機会さえ得られれば、興味を抱いてもらえるケースが少なくない。この日もプレゼンを聞いているうちに、だんだんと前のめりになる学生の姿が多く見受けられた。


ゴルフビジネスに関するプレゼンテーションを聞く姿は、真剣そのもの


株式会社ゴルフパートナー人材戦略室係長の宗政氏も頷く。「弊社に新卒入社する社員のほとんどはゴルフ未経験者です。もともとゴルフに興味があるというわけではなく、広くスポーツ軸で受けに来る子が多いですね。最初は興味がなくても、ゴルフビジネスのマーケット規模などを説明すると興味を持ってくれるケースは多いです」

「また、新卒入社をすると99%が店舗配属になるので説明会などではゴルフ用品販売の醍醐味をきちんと伝えるようにしています。ゴルフ用品はユーザーの習熟度、経験年数、年齢や性別で合う道具がどんどん変わりますし、ニーズも多種多様です。私たちは店員とお客様を“医者と患者”のような関係だと捉えていて、非常にコンサルティング要素が強い接客だと思っています。そこを理解してもらえると、仕事の魅力が伝わりやすいのでイベント時には時間を割いて説明しています」


ゴルフ未経験者も採用対象とするため、その魅力を伝えるための工夫に腐心している


ゴルフをしたことがなければ、まずクラブを14本揃えることやそれぞれの役割、使用する状況など分からないことが多いだろう。良い接客をするには「お客さまの気持ちを理解すること」と考えている同社は、入社半年後に「100切り試験」という制度を設けている。大学4年の秋に内定をもらってから入社半年経過時と考えると、ちょうど丸1年の期間がある。

その1年間で未経験のところから100を切るまでの道具選び、練習、ラウンド経験など一連の経験を積む。試験を受けるころには、お客さまが上達する過程で何に悩み、何に喜びを感じるのかを一通り体験していることになる。結果的にスコアが100を切れなくても、その実体験が顧客志向へとつながることが多いという。


株式会社アルペン 人事部採用グループマネージャー岳尾氏(右)と柴田氏(左)


「ちょうど私がこの会社に入ったころ1980年代後半は、空前のスキーブームでした。スキーと言えばアルペンという感じで、ゴルフのイメージはあまりなかったと思います。ゴルフ好きが集まっている会社というわけではなく、スポーツ全般が好きという社員が多いですね」と話すのは、株式会社アルペンで人事部採用グループマナージャーを務める岳尾氏。「ゴルフ5」という小売ブランドを持ちながらも、新卒で入社する社員のほとんどはゴルフ未経験者だという。

採用や入社後の育成で工夫していることを聞いてみた。「弊社はスポーツデポ、アルペン、ゴルフ5など複数の店舗ブランドがあります。スポーツデポとアルペンは大勢のアルバイトさんに接客をしてもらうスタイルで、ゴルフ5は社員自らが接客するスタイルが基本となります。そのため、自分の力で成果を上げていく実感を持ちたい、というタイプにはゴルフ5の方が合っていると思っています。なので、選考段階でどの店舗ブランドにフィットしそうな子か見極めながら、話す内容も変えています」。ゴルフを好きになってもらうというよりはその仕事の醍醐味となる部分への適性を重要視していると説明した。


日ごろの悩みも似通う、同業他社の人事担当同士。イベント後の座談会で盛り上がる


そのため入社した後に新入社員全員でラウンドに行くなどの催しはないが、もともとスポーツが好きで入社する人材が大半のため、ゴルフもサーフィンも山登りもすべてのジャンルで一緒にやる仲間に困ることはないという。なにより週休3日制度を取り入れている会社でもある。同じスポーツを好きな者同士が店舗を越えて休みのたびに集まり、日ごろから仲間とともに趣味を楽しむ風土が醸成されているようだ。ゴルフ未経験であっても自然と上達に近づいていきやすい。スポーツを楽しんでいる仲間が周りにたくさんいるからこそ生まれる好循環は、きっと仕事にも生きてくるだろう。

そして私たちGDOも同じく、ゴルフ未経験者を多く採用している。これまで創業時に掲げた「インターネットでゴルフの変革をリードする」というミッションに沿い、ゴルフの予約を便利にし、インターネット通販でゴルフ用品を気軽に速く手に入れられる仕組みを構築し、PCやスマホからいつでもゴルフに関するニュースや最新情報を入手できるように努めてきた。


最初は緊張気味だった学生たちも、人事担当者の話術にだんだんと表情がほぐれていった


私たちが提供しているのは、一貫してゴルフを楽しむ人たちのためのサービスである。ユーザーがそれを楽しむのは、主に“ゴルフ場”というリアルの場所だ。その場所はどんなところなのか、ユーザーはどんなときに楽しいと思うのか。それを真に理解するため、新卒入社後に「ゴルフ場での業務体験」などの研修はある。イベントを共同開催した2社と同様に、会社が強いてゴルフをさせることはないが、自身の業務を突き詰めた結果、自然と知りたいと思ってもらうことを重要視している。

「知らない」ことを好きになることはできない。その対象を理解していく過程で、自分が知りえなかった世界や出会ったことのない感情を理解し、体感し、「知る」が新たな「知りたい」を生み、どんどん「好き」に近づいていく。恋愛をイメージしてみると、わかりやすいかもしれない。

現在、日本においてゴルフをプレーしている人は総人口の5%以下。つまり日本人の95%はゴルフを知らない。最近の激化した採用市場において、多くの人が「知らない」スポーツを仕事にする楽しさを伝えていくのは非常に難しいことだ。「知らない」を「知る」に変え、「知る」を「好き」に変えていく、その力を持っている企業だけが良い人材を集め、持続的な成長を可能にするだろう。「知る」から「好き」への道筋づくりに悪戦苦闘するゴルフ業界の人事担当者たち。今年もその奔走はすでに始まっている。

(文・Golf Links the World編集部/星 写真・角田慎太郎)

 

■イベント開催協力:株式会社アルペン株式会社ゴルフパートナー株式会社アンビションアクト

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